【対処方法その1】電気ストーブなどで部屋を暖めながら除湿運転する
これまでの話の中でお話したとおり、エアコンは暑い部屋で冷房運転をガンガン行っているような状況では高い除湿能力を発揮しているということが分かっていただけたのではないかと思います。
このことを利用するならば、梅雨の時期にわざと部屋で電気ストーブ(石油ファンヒーターは水分も一緒に出してしまうためNG)をつけてエアコンの冷房運転をしてやれば、エアコンはガンガン冷房を行うことができるようになるため、それに伴って部屋の水分がドレン水として室外に排出されるようになります。
このことに着目したエアコンメーカーは、一部の高級エアコンなどに「再熱除湿運転」というものを採用しています。
再熱除湿運転ができるエアコンは、上の図のように冷房運転の場合に室外に排出すべき熱の一部をそのまま室内に残して空気を加熱し、その後冷房運転と同じような冷たくなったフィン部に空気を流すことによって、適温のカラッとした空気を排出する事を出来るようにしています。
ただ、このようなことが出来るようなエアコンは上位機種に限られる(配管を複雑に配置する必要があるため、製造コストも高くなる)ということと、再熱除湿では除湿に使えるアルミフィンの面積が減る(冷房運転はすべてのアルミフィン熱交換器が冷たくなる)ため、除湿量そのものは冷房運転時より減ってしまうというデメリットもあります。
除湿効率としては、エアコン再熱加熱除湿はデシカント式除湿機と同等レベルと思っておけばOKで、印象としては少し電気代が高いというイメージがあります。
除湿効率の比較
除湿方法 | 効率 |
---|---|
エアコン冷房 | 0.21リットル/円 |
エアコン除湿(弱冷房) | 0.27リットル/円 |
エアコン再熱除湿 | 0.10リットル/円 |
除湿機(ヒートポンプ式) | 0.17リットル/円 |
除湿機(デシカント式) | 0.10リットル/円 |
除湿剤(押入れに置くタイプ) | 0.01リットル/円 |
エアコン除湿+電気ヒーター | 0.04リットル/円 |
エアコン除湿+石油ストーブ | 0.09リットル/円 |
先ほどお話した電気ヒーターとエアコン除湿を使った除湿は、エアコン再熱除湿やデシカント式除湿機の半分ぐらいの効率でしか除湿できません。
これを石油ストーブとエアコン除湿という組み合わせで除湿していくと、石油ファンヒーターから出る水分を加味しても、エアコン再熱加熱やデシカント式除湿機とほどんど同じぐらいの効率で除湿していくことができます。
ただし、石油ストーブの場合、定期的な換気の必要も出てきたりしますので、実際の除湿効率はもう少し悪くなるものと考えられます。
こういった事も考えながら、除湿機を購入すべきかどうか検討してみるというのも面白いですね。
【対処方法その2】サーキュレーターで部屋の空気を撹拌する
もう一つ、エアコンの除湿能力を高める方法として紹介しておきたいものは、サーキュレーターを使う方法です。
通常、エアコンの冷房は部屋の下方床面だけを冷やすような構造になっているため、冷房運転中は部屋の上部(あたたかい)と下部(冷たい)に温度差ができやすくなります。
人間がいる床面に近い部分だけを冷やすことは省エネにつながる(冷やすべき空間が減る)のは確かなのですが、エアコンの電気代が安くなるということはエアコンの稼働率が下がるということですので、それに伴ってエアコンによる除湿量も下がってしまうというデメリットがあります。
そこでサーキュレーターなどを使って部屋の温度を均一にし、冷房や除湿の稼働率を上げ(部屋の熱負荷が上がるため、電気代も少し増える)、これまでよりもたくさん除湿して部屋の中にある水分を室外に排出できるようになります。
【対処方法その3】24時間換気システムの運用を見直す
24時間換気システムは、2003年の建築基準法改正に基づき、2時間に1度のペースで住宅内のすべての空気を外気と入れ替えることを目的に住宅に取り付けられている換気システムのことをいいます。
24時間換気システムには色々な方式や種類がありますが、湿度の調整機能がある高価な全熱交換式の換気システム(第一種換気システム)が設置されている場合を除き、安価な第三種換気システム(排気側に換気扇、吸気側は外気に通じているダクトのみ)では外気に含まれている湿気が家の中にそのまま大量に入ってきしまっているのが現状です。
ここで気になるのが、24時間換気システムがどれぐらいの水分を室外から家の中に運び入れてしまうのかということだと思います。
このことについては、一般的な湿度計に表示されている相対湿度(空気が含むことのできる水分の割合、空気中の相対湿度100%になるとそれ以上は水分を含むことができないようになる)ではなく、絶対湿度(1㎥の空気が含んでいる水分の重さ、単位はg/㎥)という指標を用いることで計算していくことができます。
梅雨の時期の場合
部屋の温度が27℃、湿度が50%、外気の温度が25℃、湿度が95%とした場合、空気1㎥に含まれている水分量(絶対湿度という)は、以下のようになります。
- 部屋の絶対湿度;13g/㎥
- 外気の絶対湿度;22g/㎥
※気圧は1013.25hPaで計算
3LDKの一般的な一軒家(124㎥)の場合、1時間あたり62㎥の空気を外気と入れ替えられていることになりますので、24時間換気システムで流入してくる1時間あたりの水分量は以下の通りになります。
62㎥/h✕(22g/㎥ー13g/㎥)=558g/h
これを一日あたりに換算すると、13kg/dとなります。
夏の時期の場合
部屋の温度が27℃、湿度が50%、外気の温度が32℃、湿度が60%とした場合、空気1㎥に含まれている水分量(絶対湿度という)は、以下のようになります。
- 部屋の絶対湿度;13g/㎥
- 外気の絶対湿度;20g/㎥
※気圧は1013.25hPaで計算
先程と同様に3LDKの一般的な一軒家(124㎥)の場合、1時間あたり62㎥の空気を外気と入れ替えられていることになりますので、24時間換気システムで流入してくる1時間あたりの水分量は以下の通りになります。
62㎥/h✕(20g/㎥ー13g/㎥)=434g/h
これを一日あたりに換算すると、10kg/dとなります。
このように梅雨や夏の時期は24時間換気システムから一日あたり十数リットルもの水分が家の中に入ってきてしまっていることになります。
換気による室内への水分流入量の計算シミュレーター
こちらのシミュレーターで換気による室内への水分流入量を簡易計算できますので、いろいろな条件を入力してみてください。
24時間換気システムはつけっぱなしが基本ですが、例えば、梅雨の時期だけは風量設定を弱にするなど少し弾力的な運用をしてもいいのではないかと思います。
最近では空気の汚れ具合を測定できる空気品質モニター(CO2;二酸化炭素、TVOC;総揮発性有機化合物、HCHO;ホルムアルデヒドなどを測定可能)が5000円以下で販売されていますので、そういったものを購入して適切な換気量を自分でコントロールしてくのも一つの手です。
なお、具体的な室内空気汚染の濃度基準などは以下が参考になると思います。
なお、高価な全熱交換型の第一種換気システムを採用している場合でも定期的なフィルター掃除などの清掃を行っていない場合、熱と湿度を交換するエレメント部分(特に吸気側)がホコリなどで詰まってしまって、うまく熱と湿度を交換できないというケースもあります。
このシステムの場合、特に吸気側(家の中の空気を室外に排出する経路)が詰まりやすく、こうなってしまうと熱や湿度を交換するエレメント内部に室内側の空気が通っていかなくなるため、単に外気を家の中に入れるだけの装置になってしまっています。
築年数が経過してきて段々と部屋に湿気が溜まりやすくなってきたような場合は、こういった部分も点検してみることをおすすめします。
【対処方法その4】エアコンクリーニングする
エアコン除湿のメカニズム(2ページ目)のところでお話したとおり、部屋の除湿は基本的にはエアコンの除湿機能を使って行っていくのが効果的です。
エアコンの除湿はエアコン内部にあるアルミフィン熱交換器が冷えて空気中に含まれている水分が結露し、それがフィンからドレンパンに流れ落ち、最終的にはドレンホースを通って室外に排出される仕組みになっています。
ただ、エアコンは長い間掃除せずに使い続けていると、フィルター部分だけではなく、アルミフィンの部分にもホコリやカビ汚れがびっしり付着してきます。
基本的に、アルミフィン部分はピカピカできれいなであればうまく水滴が下に流れ落ちていくのですが、そこにホコリ等が大量に付着していると水分がうまく下に落ちなくなってしまいます。
その結果、本来であれば室外に排出されるべき水分が室内機の汚れたアルミフィン部分に保持されたままになってしまうため、除湿能力が落ちてしまうことがよくあります。
ちょっとした汚れであればホームセンターで売られている洗浄スプレータイプのエアコンクリーナーで汚れを落とすことができます。
これまで一度もエアコンクリーニングをしたことがない場合は、これが原因で除湿能力が低下している可能性があります。
室内機の前面カバーを開いてみたり、吹出口の奥の送風ファンを覗いてみたりして、中の汚れ具合を確認してみてください。
もし、ぱっと見た感じで相当な汚れが確認できた場合、汚れがエアコンの除湿能力を下げている原因になっている可能性がありますので、本格的なエアコンクリーニングを検討してみることをおすすめします。
【対処方法その5】冷媒を補充する(ガス漏れの場合)
エアコンの除湿で湿度が下がらないという症状に対して、冷媒漏れによる除湿機能の低下も原因のひとつとして考えられます。
エアコン内に充填されている冷媒量が少なくなってしまうと、室内機のアルミフィン熱交換器の一部分だけしか冷たくならないため、除湿できる水分量が減ってしまいます。
エアコン除湿が効かなくなる原因が冷媒漏れである場合、エアコンの冷えが悪くなったり、室外機の配管(上側の細い方)に霜がついてくることがあります。
特に、冷房運転中に室外機の配管に露(つゆ、水滴)ではなく霜(霜、白色)がついている場合、冷媒が漏れている可能性があります。
ただし、エアコンの冷媒ガス漏れで上記のような状態になるのは、古い一定速タイプの圧縮機を搭載している場合だけなので、最近のインバータータイプのエアコンの場合、上記のように配管に霜や氷がつかないこともよくあります。
このような冷媒ガス漏れの症状が原因で除湿が効かない場合、冷媒ガスを再充填してやれば、またちゃんと除湿できるようになります。
エアコン充填費用はおおよそ1~1.5万円が相場で、エアコンの冷媒漏れがある場合はプラス1~2万円ほど必要になる場合があります。
エアコン取り付け直後の冷媒漏れの場合はエアコンの初期不良や取り付けミスなどが原因である可能性が高く、取り付けから数年後の冷媒漏れはエアコン配管の腐食などが考えられます。
エアコンの冷媒漏れのことについて詳しく知りたい方は、こちらの記事が参考になると思います。
最後に一言
今回は、【湿度が下がらない】エアコンの除湿が効かない原因と対処法まとめについてお話しました。
近年、住宅の断熱性能が大幅に向上してきた結果、冷房負荷(エアコンの運転率)が少なくなって電気代は安くなったものの、逆にエアコンの除湿量も減ってしまい、単純な冷房運転や除湿運転だけでは部屋の湿度を下げることができないうようになってきました。
色々試してみて、家の除湿がうまくいくようになると部屋の湿度が下がってくると、部屋の中が驚くほど快適な環境に変わってきます。
なお、エアコンだけではなく除湿機や珪藻土、エコカラットなど話題の除湿グッズを使って効果的に除湿する方法についてもこちらの記事で紹介しています。
>>【除湿グッズ】部屋の湿度を効率良く下げる省エネな除湿方法まとめ
是非参考にしてみてください。
それでは!