不具合原因の具体的な特定手順
エアコンの不具合原因を特定していくためには、上記のような専用道具を使ってガス圧を測定したり、エアコン内部の状態を分解チェックしたりする必要がありますが、危険が伴う作業になるため、素人の場合はなかなかそこまで確認していくことはできません。
ただ、そういったことをしなくても室内機からの吹き出される風の「温度」や「風量」に着目することによって、不具合の原因をある程度把握していくことができるようになります。
- 吹き出し温度が高い場合
→冷媒ガス漏れや室外機の汚れ、経年劣化による性能低下などが原因 - 吹き出し風量が弱い場合
→室内機の汚れなどが原因
まずは冷房の効きが悪くなってしまった原因を探っていくため、どちらの症状に当てはまるか下記手順を参考にエアコンを起動し、冷風の状態をチェックしていきましょう。
【STEP1】エアコン本体をリセットする
エアコンは強いノイズを受けたりするだけで誤作動を起こし、冷房の効きが悪くなることがあります。
本体のリセット操作で不具合が解消することもありますので、まずは以下の手順でエアコンをリセットしてみてください。
エアコンをOFFにする
エアコンが動いている場合はリモコンでエアコンの電源をOFFします。
運転ランプやタイマーランプが点滅して既にエアコンの動作が停止してしまっているような場合は、そのまま次のステップに進んでください。
室内機の電源コードを抜く
次に、エアコンの電源コードを抜きます。
電源プラグが高いところで抜き差ししにくい場合などは、分電盤の中にあるエアコン回路のブレーカーを落としてもOKです。
ルームエアコンの場合、電源は室内機側のコンセントのみとなっていますので、ここまで作業ができたらエアコンに流れる電気は遮断できたことになります。
1分後に電源を入れ直す
エアコンの電源を落としてから1分後にコンセント(ブレーカー)を挿し入してください。
ルームエアコンの場合、電源コンセントは室内機のところに一箇所しかないため、この操作を行うことで、室内機だけではなく室外機の方も同時にリセットすることができます。
【STEP2】応急運転ボタンで起動する(基本動作確認のため)
日立(白くまくんなど)のエアコンには前面パネルを開いたところや本体の右下あたりに応急運転ボタン(電源ボタン)がついています。
ちょっとした不具合の場合、この応急運転スイッチで起動すればエアコンを一時的に復旧する事ができる場合があります。
具体的な操作方法については説明書を御覧いただきたいのですが、日立製のルームエアコンの場合、以下のような手順で強制起動することができます。
- 室内機の右下の方にある自動運転スイッチを押す
- 応急運転が開始される
- 再度、自動運転スイッチを押す
- エアコンが停止する
日立製エアコンの応急運転は室温や外気温によって自動的に最適な運転モードが選ばれる仕組みになっているため、夏場の場合は冷房運転で、冬場の場合は暖房運転で起動します。
【STEP3】室外機の動作を確認する
エアコンを起動することができたら、室外機のそばに行きましょう。
そして、室外機のファンが回ること、そして、室外機の中にある圧縮機(外からは見えない)がブウゥ~ン・・・と音をたてて動き始めることを確認してください。
機種によって差はあるのですが、エアコンの電源を入れてから2~3分ほどしてから室外機が動き出すことが多いでしょう。
場合によっては、5~10分ほど動かないこともありますので、暑い中大変だとは思いますが、最低でも10分ぐらいは室外機が動き出すまで待ってみてください。
いつまで待っても室外機が動き出さない場合は、こちらの記事が参考になります。
>>日立エアコンの室外機が動かない(回らない)原因と対処法まとめ
室外機のファンや圧縮機が動き出さない場合は、室内機側にエラーコードが表示(室内機のランプが点滅など)されますので、そちらの方も確認していきましょう。
【STEP4】室内機の動作を確認する
室外機が動き出したことを確認したら部屋の中に戻り、室内機から風が出てきていることを確認していきます。
このようにエアコンの運転は、①室外機のファン → ②室外機の圧縮機 → ③室内機のファンという順番で始動していきます。
上記の3つを確認することができたら、とりあえずはエアコンの起動を確認することができたということになります。
風の温度が高い場合(冷媒ガス回路に冷房が効かなくなる原因がある)
室内機の吹き出し温度が高い場合の冷房が効かない主な原因はガス漏れ、室外機の汚れ、コンプレッサーの性能低下となります。
家に温度計があるような場合は、エアコンの吹き出し温度を測定して「室温より10℃以上低い」ことを確認してください。
室温と吹き出し温度の差が5℃ぐらいしかないような場合は、何らかの不具合が発生している可能性が高く、本格的な点検(場合によっては修理)となってきます。
【冷房が効かない原因1】冷媒ガス漏れ
ルームエアコンの配管内にはおおよそ1kg前後の冷媒ガスが封入されています。
何らかの理由でこの冷媒ガスが漏れて少なくなってしまった場合、室内機の中にある熱交換器の温度を低く保つことができなくなり、吹き出される冷風の温度が上がってしまいます。
エアコンがガス漏れを起こしてしまうと室外機の配管(細い方)が氷点下以下まで温度が下がって霜が発生して真っ白くなるため、ガス漏れしていることを目視確認することができます。
基本的には、室外機の風まわりが良いにも関わらず、室内機から吹き出される冷風の温度が高いという場合は、ガス漏れが冷房が効かない原因である可能性が高いと判断してもいいでしょう。
冷媒ガス漏れの原因の多くは配管接続部からの冷媒漏れとなります。
家庭用のエアコンはフレア加工を施した銅管をフレアナットで締め付けながら圧着接続する方式を採用しています。
この接続方法は、フレア加工した銅管をフレアナットで締め付けて変形させながら圧着させるため、基本的には冷媒漏れが発生しにくい構造になっています。
ただ、完全完璧にガスがもれない構造ではないため、稀に施工不良や中古品購入、引っ越しなどでの配管の使い回し(フレア加工部の再使用)、配管を接続したままエアコンを動かしたなどが原因で、接続不良を起こして冷媒が漏れてしまうことがあります。
家庭用エアコン場合、冷媒漏れを起こしやすい冷媒配管の接続部は室内機側と室外機側の2箇所となります。
室内機側の配管接続部
室外機側の配管接続部
冷媒ガス漏れ修理の料金相場
冷媒ガス漏れ修理を依頼した場合の料金相場は、以下の通りとなります。
エアコンの効きが悪い (生ぬるい風しか 出てこない) | 【故障原因】冷媒ガス漏れ(継ぎ手部分) 【修理方法】ガス漏れ修理(フレア加工)とガスチャージ 【料金相場】1~3万円 【故障原因】冷媒ガス漏れ(配管パーツの腐食など) |
※修理費用の相場はメーカーサポートに依頼した場合のおおよその金額となります。
エアコンの効きが悪い(一応は冷風が出ている)というレベルの場合、冷媒ガスが少しづつ漏れていっているケースがほとんどですので、修理費用が高額になることはあまりないでしょう。
ただし、最終的な修理費用はサービスマンの方が来て現地見積を行わないと確定されませんので注意が必要です。
【冷房が効かない原因2】室外機の汚れ
エアコンの室外機は室内機で吸収した熱を外に排熱する役割をしています。
ただ、室外機のフィン部にホコリ等が溜まってしまって十分な空気を吸い込むことができなくなった場合、うまく排熱することができなくなり、最終的に室内機側の吹き出し空気温度が上がってしまう結果となります。
基本的にはルームエアコンの室外機はノーメンテナンスでいける場合が多いのですが、置かれている場所によってはペットの毛や洗濯物のホコリなどが室外機の裏側のアルミフィン部に大量に付着して風の通り道を塞いでしまっていたりすることがあります。
室外機の裏側に掃除をするための隙間があるような場合は、ブラシなどを使ってアルミフィンの汚れを取り除いてあげましょう。
ただし、アルミフィン部は手を切ってしまいやすいですし、掃除しやすくするためにエアコン配管をつなげたまま室外機を動かしてしまうとガス漏れの原因となってしまうこともありますので注意が必要です。
なお、室外機の汚れを本格的にきれいにしたい場合、室外機を分解してアルミフィンの表側から裏側に向かって高圧洗浄機で水をかけて汚れを落としていく必要がありますが、エアコン室外機の内部は高電圧(数百ボルト)が流れていますので万が一感電した場合大変なことになりますので、素人が分解洗浄するのはとても危険です。
こういった場合は、エアコンクリーニング業者に室外機の洗浄クリーニングをお願いしていきましょう。
室外機のクリーニング費用の相場
内容 | 料金相場 |
壁掛け1台 | 8~9千円 |
壁掛け1台 (お掃除機能付き) | 1.4~1.6万円 |
室外機洗浄 (オプション) | 3~4千円 |
基本的に、室外機のクリーニングは室内機のエアコン洗浄のオプション扱いとなっていることが多いです。
先程お話した室内機の風量低下もある場合は、室内機の洗浄と合わせて行ってもらうのがいいと思います。
【冷房が効かない原因3】圧縮機の摩耗劣化(10年以上使用の場合)
室外機の中にある圧縮機(コンプレッサー)が経年劣化してしまうと、冷媒ガスをうまく送り出すことができなくなり、その結果、室内機から吹き出される温風の温度が上昇してしまいます。
この経年劣化による性能低下は年に3~4%と言われているため、単純に考えると、エアコン設置から10年も経過すればエアコンの能力(≒効率)は30~40%も低下してしまっていることになります。
最近のエアコンは圧縮機の回転数を調整することができるため、少々の性能低下であれば圧縮機の回転数を上げることでカバーしていくことができるできるのですが、極端に圧縮機の効率が落ちてしまうと、いくら圧縮機が頑張っても(電気をたくさん使って圧縮機を回しても)、室内機から吹き出される風の温度が下がらず、部屋を涼しくすることができなくなっていきます。
特に、外気温が35℃を超えるような状況の場合、こういったエアコンの性能劣化が原因でエアコンが効かないというケースが目立ちます。
もう10年以上エアコンをしっかりと使ってきた場合、圧縮機の摩耗によるエアコンの性能低下が冷房の効きが悪くなる原因となっている可能性が高いでしょう。
圧縮機の交換修理の料金相場
圧縮機を交換する場合の修理料金の相場は以下の通りです。
症状 | 故障原因と修理費用相場 |
エアコンの効きが悪い (生ぬるい風しか 出てこない) | 【故障原因】室外機内にある圧縮機の経年劣化 【修理方法】圧縮機の交換修理(ロウ付け) 【料金相場】8~17万円 【備 考】10年以上経過したエアコンに多い |
※修理費用の相場はメーカーサポートに依頼した場合のおおよその金額となります。
家庭用のルームエアコンの場合、劣化して効率の悪くなった部品(圧縮機)を交換修理するためにはロウ付け作業が必要となるため、修理費用はかなり高額になってしまいます。
この場合は修理するのではなく買い換える方向で検討してくのが経済的です。
風量が弱い場合(室内機の風周りに冷房が効かなくなる原因がある)
室内機から吹き出される風量が弱い場合の主な原因はエアコン内部の汚れです。
【冷房が効かない原因4】エアコン内部の汚れ
室内機の風量が低下してしまうのは、エアコン内部の汚れが原因です。
例えば、エアコン室内機のカバーを開いたところに見えているアルミフィン熱交換器にカビ汚れなどがびっしりと付着してしまっているような場合、この隙間を通る空気の邪魔になるため、エアコンの風量が落ちてしまいます。
この他にも、吹出口の奥の方に見える送風ファンのフィンとフィンの間にホコリやカビの汚れがついてしまっている場合も、エアコンの風量は低下してしまいます。
写真ぐらいの汚れであればそれほどエアコンの能力に影響することはありませんが、もう何年もエアコンクリーニングを行っていないような場合、アルミフィンや送風ファンの空気流路を完全につまらせてしまっているというケースもあったりします。
そのような場合、エアコンは全力で運転している(ファンはブンブンと音をたてて回っている)のにエアコンの吹出口から風がちょっとしか出てこない状況になってしまっています。
これらの例のように、エアコン内部まで汚れて風通りが悪くなってしまっているような場合は、エアコンクリーニングを業者に依頼して、アルミフィンや送風ファンの汚れを取り除いてもらうのが効果的です。
エアコンクリーニング業者が使っている洗浄ポンプでフィンの奥にある汚れまでスッキリ取り除くことができれば、エアコン運転時の風量がアップしてエアコンの効きが改善します。
一般的なエアコンクリーニングの相場は以下の通りです。
エアコンクリーニング費用の相場
内容 | 料金相場 |
室内壁掛け1台 | 8~9千円 |
室内壁掛け1台 (お掃除機能付き) | 1.4~1.6万円 |
室外機洗浄 (オプション) | 3~4千円 |
まとめ
日立エアコンの冷えが悪くなった場合、まずはリモコン設定と室内機、室内機の状態をチェックしましょう。
冷房が効かなくなる原因は、室内機の風量が弱いか、風の温度が高いかによって対処法が異なってきます。
調子が悪いまま使い続けてしまうと本格的な修理が必要となってしまいますので、効きが改善されない場合は早めに点検してもらうことをおすすめします。